天国と地獄とそのまんなかが、ぜんぶわたしのなかにある

 赤ちゃんを産みにきたのに、わたしはこんなところ(精神科病棟)で、ひとりで、一か月以上も何をやってるんだ…と考えて泣きそうになるとき、(でもビアンカは赤ちゃんを産んでから十年も、リュカだって八年間も会えなかったし…!)と考えて己を鼓舞している。
 いっぺんにいろんなことが起こりすぎて、つわりとか結婚とか含めてぜんぶ夢だったのかもしれない、わたしの病が見せた幻なのかもしれない……と弱ったメンタルで病室にいるの、かわいそうでは??? いったいどんな罪でこんな感情になっているんだ……いやでもビアンカはもっとたいへんだったと思うし……。

 つわりから始まる出産にまつわるエトセトラが凄まじすぎて「神から与えられた試練です」って言われたらぜんぜん納得できる。実際このイベントを経て「他人と喋りたくないとか言ってる場合じゃない!」となって、がんばって発言できるようになったし……。

 ところで、一か月閉じ込められたあとに外に出たときの空のひろさ、空の青さがすばらしくて、わたしがお魚だったら無限に空に泳いでいけてしまうな……みたいな……世界の広さにわくわくする感じ、すごくよかったです。空気が透き通って、青いところまで、ずっと有る。はよ退院したい、退院して、冒険に出たい……冨樫義博展に行きたい……。

 なんだかすごく不安になったり、今の自分はどこかおかしいな…と数日考えてわかったんですが、赤ちゃんを産むことを、よろこびやうれしさよりも「精神病を起こすリスク」として周囲から話されていて、わたしという当事者よりも病気が主体になっていて、そのほかの人間的側面がほとんど無視されていることがつらかったんだな、とわかって(かわいそうだな…)と思いました。どうしてこういう社会システムになるんだろうか? とてもじゃないけどはじめての出産後一か月半、赤ちゃんから引き離されてることで家族をすることができず、ママの実感も持てずに不安定な産婦さんに対する人道的対応とは思えない扱いを受けてるの、まじでびっくりする。赤ちゃんを産むまえの私的日記の、わたしの、出産への無邪気さを見てると、かわいそう……こいつを守ってやらないと……という気もちになる。だいじょうぶだよ、強くなるから…赤ちゃんがかわいいからだいじょうぶ…わたしも赤ちゃんだったからだいじょうぶ…すぐ進撃のせりふが響いてしまう…。

 というわけで2023年の目標は「強くなる!!!」です。